中国でのビジネス(義烏進出の事例から)

 私は約4年前、偶然、中国の義烏市という街と出会い、この街の持つパワー、又、人々の人柄の良さに強い魅力を感じ、すぐに現地に事務所を設けてスタッフを置き、視察、商品の買付け、検品、輸出などの業務を始めた。義烏は、日本では百円ショップの仕入れ先として有名になった街だが、もともと貧しい農村であったが今では8万軒の問屋側がビルに入居し、この20年間で2800倍のGDP成長をとげ、毎日20万人のバイヤーが訪れている。

  義烏の卸売市場の魅力は、別の機会に詳しく書くとして、今回は、こうした経験から得た中国でのビジネスについて述べてみたい。まず、最初に多くの人が抱く印象として、中国は大丈夫か?危険はないか?騙されないか?ということであろう。確かに、1980年代から2000年始めぐらいまで中国に進出した日本人は騙された人が多い。至るところに共産党や公安や軍に強いと名乗る人が現れては騙されたと聞く。

 しかし、私のこの4年間の義烏の経験では、そうした事態は減ってきているように思う。私はこの4年間で数十回の訪中を行ってきたが、私がそう思う理由として次の三点があげられる。まず一つ目に、現地の人々が若返っていることである。役所も企業も本当に若い人がトップについている。30代、40代が中心となり、歳がいっても50代。義烏ではこうした人々が苦労をしながら、実際のビジネスで信用を重ねることから這い上がってきている。

 二つ目に政府の指導層の高学歴化である。義烏の場合、政府のトップも市長も40歳代前半。政府の幹部は大学や大学院などを卒業し、海外に留学や派遣された経験を持ち、高い教養を持っている。博士やMBAを持ち、3ケ国や4ケ国の言葉を話す人も少ないない。欧米など先進国で彼らは十分なマナーを教えられ、現在、義烏市職員は200ケ国以上の国々の人々とつきあいをもっている。

 三つ目にあげられるのが、やはり、経済力だろう。義烏は中国でも有数の富裕層が住む街となった。街にはベンツ、BMWが多く走り、高級レストランも賑わう。お金を持った人たちがお金を騙し取る必要もなければ、そんな事をして信用を無くすと大変なことになる。正直、私も義烏の人と恐れながらつきあってきた。しかしながら、会食一つとっても、私に会計も払わせてくれず、いつもご馳走になっているのが現状である。

 ひと事で言うと、中国はこの20年間で一気に近代化が進んだからと言えよう。また、この近代化は止まることなく、内陸部にも進んでいる。聞いたところによると、今では沿岸部より中央政府の投資が盛んである内陸部の方が進んできたと聞く。日本を訪れる中国人購買力を見てもわかるように、中国人は今、豊かになった。日本人がこれまでもってきた中国人への感覚は変えた方が良いと言えよう。

 次に、皆さんが心配することに反日感があるだろう。日本のマスコミでは尖閣諸島問題など、繰り返し、中国の反日デモなどが報道されている。あれを見ると誰もが訪中を恐れるだろう。ただ、これは中国でも同じである。東京の反中デモや福岡で右翼が中国人観光客を取り囲む映像が中国でも連日流されている。それを見た中国人が怯えることは理解できるであろう。

 実際のところ、私は尖閣諸島問題以降も何度も訪中しているが、危険な目にあったり、危険な場面を見たことがない。至って中国人も親切である。むしろ、外国人を見て向こうが怯えているとさえ言える。これは、日本でも同じである。普通に歩いている中国人に危害を与えたりするのは、余程、変な日本人であり、そんなことはまずない。百聞は一見にしかずと言うが、本当に物事は自分の目で確かめることが大切だと思う。

 次に、中国人とのつきあい方である。私も、中国人の友人が日本に来た時、観光や買物につきあう事が多いが、確かに偉そうにしている。しかし、ずっと一緒にいると、これらは知らない国で不安から出てくる恥じらい、虚勢であることがわかってくる。私はつっこんで本音で接するようにしている。酒も飲む。そうすると、彼らは、実に礼儀正しく、マナーを心得た行動をとるようになる。

 一昨年、義烏から社員千人を超える社長たちが大阪にやってきた。私は買物などに長い時間おつきあいし、夜には高級店ではないがレストランに招待した。そこでは、何と社長達が正座でお辞儀をして、地元の歌と踊りで感謝をしたいと、全員で歌と踊りを披露してくれた。昼間は偉そうに高い物を買い続けていた彼らの違う側面を見た。本当は心のやさしい人たちなのである。

 中国人の経営者の部屋には帆船が飾られている。ビジネスは風に乗ることが大切だという意味だ。「一帆順風」と言う。たった数時間で数万円もあれば気軽に行ける中国。日本人もメディアに騙されることなく、一人一人が実際に自分の目で確かめ、自分の手で風に乗り、新しい日中関係を築いて行くことが大切であると感じている。やがて、アジアにおいても国境がなくなる時代が到来するだろう。

 義烏についてご興味のある方は、http://www.aio-inc.com

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