尖閣諸島問題。中国との交流を積極的に行ってきた私にとっては、やっかいな衝撃的な事件であった。大勢での訪中視察の中止。また、中国からの訪日団との気まずい雰囲気。
私の見解は、尖閣諸島は現在、実態として日本の領土なのだから、日本領と認識しているが、今回の事件で、日中両国の報道を見ていると多くの疑問とメディアの恐ろしさを感じる。
日本では、海上保安庁の船と漁船がどのような経緯で、こうした事件となったかの報道がなされない。ビデオが公開されない以上、その本当の事実経過がわからない。
日本のメディアは、中国漁船が強行的に海上保安庁の船にぶつかってきたと主張し、中国のメディアは海上保安庁の船に取り囲まれ、逃げようとして衝突したと主張している。
事実を明確にするには、ビデオを公開すれば良いのに、政府は日中関係を考えると公開できないという。しかし、中国政府は繰り返し、ビデオの公開を呼びかけている。また、公開ができないのなら、せめて、中国側に極秘で開示してほしいと訴えている。
どうして、開示できないのであろうか。正直、私の知っている海上保安庁の職員のなかにも、右翼的発想で、中国に対して反共思想をもった知人もいる。彼らなら、もしかして、権力のもと、暴走してないかとの疑問も感じる。
また、両国のメディアは、日々、自国の優位な情報報道に過熱した。日本では中国が共産党一党支配国で恐ろしいというような報道が繰り返され、中国では訪日中国人観光客が福岡で右翼の街宣車に取り囲まれるシーンが繰り返し報道された。
日本では、多くの日本人が、中国に怖いイメージを持ち、訪中を取りやめた。同じことが中国でも言える。しかし、実際のところ、個人レベルでの反中、反日感情は少ない。上海の友人に連絡したが、相変わらず多くの日本人観光客が訪れているという。また、私のこの間、中国からの訪日客を京都や神戸に案内した。
明らかに、両国のメディアの過熱である。私は、中国側が主張する京都大学名誉教授井上清氏の書いた尖閣諸島の歴史に関する論文も見てみた。
http://www.mahoroba.ne.jp/~tatsumi/dinoue0.html
尖閣諸島の歴史を研究する論文としては、よく研究されている。だが、内容の是非は別として、あれだけ中国では報道されている氏の論文だが、日本ではほとんど報道されないことが気になる。
これでは、両国のメディアを見た人々は、とにかく相手国は悪い国と洗脳され、反日、反中感情が加速されるだけである。まるで、戦前、メディアに騙され、暴走していく姿を繰り返しているようにも感じる。
ちょっと、インターネットで調べれば、様々な情報が取れる時代であるが、多くの人々が、テレビや新聞の情報に大きく影響され、世論が形成される。今回の事件に関わらず、私たちは自分の目で、広く、又、冷静に物事を考えていく必要性を強く感じる。暴走して犠牲を出し、目を覚ましてから気がつくのでは遅い。