鴻鵠の志

 尊敬する恩師から素晴らしい句を教えて頂いた。
燕雀いずくんぞ、鴻鵠の志を知らんや


 近くしか見ないで、無難にしか行動しない人に、
大きな志をもって、先を見て行動する人の気持ちはわからない。
ツバメやスズメのようなちっぽけな鳥が 鳳 ( おおとり ) の大きな志がわかるはずがない。


 陳勝 ( ちんしょう ) は、秦の貧しい農民でした。
ある日、彼はいつものように雇われ農夫として働いていましたが、
ふと手を休めて側にいた仲間に、「ああ、苦しいときの仲間というのはいいものだなあ。
もし、金持ちになってもお互い忘れないようにしよう。」と言った。


 それを聞いた者が、「なに言ってるんだ。雇われ農夫のお前が金持ちになるなんて笑わせないでくれよ。」と言うと、陳勝は天を仰ぎ、「ああ、燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや。」と言って嘆息した。


 その後、陳勝は徴用されて兵役につくことになりましたが、 大沢郷 ( だいたくきょう ) というところまで来たときに大雨にあって足止めされてしまった。秦の法律は極度に厳しかったため、 目的地に着く期限に遅れれば斬罪になるかも知れない。

 
 かねてより大志を胸に抱いていた陳勝は、むざむざと罪を受ける道を選ばず、 共に徴用された仲間に対して、演説しました。「諸君は、雨に遭って約束の期限に遅れた。これは秦の法律では斬罪に当たる。ここで逃げても死罪は免れない。どうせ死ぬのだ。


  同じ死ぬ身ならば大いに名を挙げてみようじゃないか。王侯将相 ( おうこうしょうしょう ) 、いずくんぞ 種 ( しゅ ) あらんや!(王や諸侯、将軍、宰相は生まれながらに決まっているわけではない、誰でもなれるのだ)」


 こうして、陳勝は同僚の 呉広 ( ごこう ) と共に秦に対する反乱を起こした。陳勝呉広の乱は反秦感情の追い風を受けて火のごとく広がり、陳勝自信も一時「 陳 ( ちん ) 王」を名乗って勢力を伸ばしました。陳王は、結局、部下に殺されるが、秦は3代で滅び、劉邦によって再び中国は統一される。

 
 一介の農民でありながら、その弁舌をもって同士を集め、 決断力と行動力をもって一時とはいえ王となった陳勝の能力は志の意義を伝えてくれる。鴻鵠の志、今の時代にも大きなメッセージがある。

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