ニスカネンの予算最大仮説

ニスカネンは、官僚の私益は、予算規模が大であればあるほど増加すると考えます。
給料額があらかじめ定まっている官僚は、私企業のように、たとえ自らが多大の努力を
傾けて公共財や行政サービスの効率的提供を果たしても、自己の報酬を高めることは
出来ません。従って、給料以外に報酬を求めます。例えば、大きな権力、名声、多数の部下、
美麗なオフィス、専用車、立派な官舎、豊富な自由裁量予算、自由に使える交際費、
退官後の高い地位等です。これらの便益は何れも通常、その官僚自らが支配する資金が
大きくなればなるほど、又、それに伴う民間への事業発注額が大きくなればなるほど、
それらに比例して大きくなります。従って、官僚は出来るだけその為の資金、即ち予算を
獲得することに努力を傾けます。予算編成にあたっては、何よりも可能な限り大きな予算の
獲得が目的となります。
 官僚が立案、提出した予算要求は、国会で代議士が国民にかわって審議します。
しかし、審議するにあたって、代議士は、通常、官僚ほどの情報を持たないので、
官僚の提出する予算要求を詳細に検討して官僚に対抗することが出来ません。
又、予算案は、議会によって、一括して受け入れるか
一括して拒否するかの選択しかないので、議会は結局政府支出がもたらす政府サービスの
便益(効用)が、国民が負担するその費用を下回らない限り、要求額を承認することに
なるのが通常です。
 従って、出来るだけ大きな予算の獲得を目指す官僚によって、政府予算は、予算金額と
予算執行がもたらす便益とが同額になる規模まで拡大要求されます。換言すれば、
予算規模は、国民が予算の執行から得る純便益が最大となる最大規模、即ち、予算執行
から生まれる総便益と支払税額の差を最大とする規模、よりも拡大し、
その為、そうでなければ国民が得たはずの純利益は官僚の私益の拡大のための
犠牲となって消滅するとニスカネンは主張しています。
(非市場経済の制度デザイン 柴田弘文より)

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